Thule Magazine vol.14 茶道家/ラクロス選手小堀 宗翔Sosho Kobori
遠州茶道宗家13世家元次女。元ラクロス日本代表。社会人クラブチームMISTRALに所属。家元の元で修行後、自身の経験を活かしスポーツと文化の融合・発展、アスリートに向けたアスリート茶会など新たな試みで注目を集めてる若手アスリート茶人。
- Official Site:https://kobori-sosho.com
小堀さんはどのようなお仕事をされているのでしょうか
-仕事は茶道教授者、お茶の先生をしております。基本的に月曜日から金曜日までが茶道の仕事と、土日がラクロスの選手ということで現役を続けております。平日の日中は一般的な会社と同じようにスーツを着て出勤して、デスクワークをしたり、茶室のしつらえを変えたり、いろいろな作業をしております。お着物にはお茶のお稽古や取材があるときに着替えるような感じですね。
デスクワークでは外部の学校や専門学校など遠州流が様々に関わっているところがあるので、授業内容やカリキュラムの相談、お菓子の発注、そしてお客様がいらっしゃる時に茶花を買いに行ったりですとか、秘書のような事務的な仕事も幅広くしております。
お茶という文化に触れたのは何歳くらいからだったのでしょうか
-6歳くらいですかね。幼い時からお抹茶をいただいてましたし、物心ついた時から着物を着させてもらってお菓子を運んだり、お茶を運んだりをしていました。高校まで剣道に励んで、大学からラクロスを始めたのですが、練習が忙しいこともあったので、大学を卒業したときにいよいよきちんと勉強しなくちゃいけないなというところで本格的に始めました。
ラクロスはどのようなきっかけで始めたのでしょうか
-もともと私の姉が先にラクロスをやっていたんです。大学のラクロス部の先輩方が妹の私のことも知っていたので、誘っていただき体験してみたところ、思いのほかおもしろくて。「自分次第で日本代表にもなれるよ」と姉が言ってくれたこともあり、世界で戦ってみたいという想いがあったのでラクロス部に入部を決めました。
ラクロスの魅力や思い出に残っていることはありますか
-魅力はスピード感と格闘的な要素ですかね。ラクロスを始めたときには「チャレンジしたい」という想いが一番大きかったんです。ラクロスを始めるまでは球技を全くやってこなかったのですが、ラクロスの大きなチームの中で自分の地位を獲得するために同期や先輩、後輩などいろんな選手と切磋琢磨して競い合うところが楽しいなと感じていました。
日本代表になったのは社会人1年目、ラクロスを始めて4年経ったときでした。代表の選考活動は大体2年から2年半ほど前から始まるのですが、最初に何百人か呼ばれた選手が何十人になるまでふるいにかけられ、そこから半年ほど経ってからまた増やし、絞るという選考の流れなんです。目標としていたのが2013年のW杯に出場することだったので、大学の頃から全ての代表活動に励み続け、無事2013年のW杯に日本代表として出場する機会を獲得しました。私自身、目標としていた4年に1度のW杯2013年に出て一度引退も考えたのですが、現役を続ける道を選び今はミストラルのチーム活動1本に絞っています。
茶道に入ることを決心したきっかけは
-大学を卒業するタイミングで母から「ラクロスの日本代表になったその後に何を生業にするのか」ということを問われまして。お茶の道を進められたので改めて考えてみたところ、私がラクロスで結果を出せたことや、剣道に没頭できたことも茶道に後押しされたことが多かったなと思ったんです。ルーツを辿ると私の先祖は武士であり茶人でもあった武家茶人で、だからこそ自分自身も武士であり茶人でありたいと感じたんです。それから身を入れて勉強しようと思いましたね。
茶道とラクロス、その両方の技術を磨く過程で発見したことはありましたか
-2013年のW杯に出場したときに、憧れていた日本代表というものにやっとなれたものの、実際に世界に出てみると競技レベルの差や環境の違いなど世界との壁をすごく感じたんです。言語もうまく通じなかった中で、世界中の選手に自分が持って行ったお抹茶のセットで抹茶を差し上げたら日本の文化をとても喜んで大切にしてくれて、初めて自分が日本代表として認められた感じがしました。そのときに競技だけが強いというだけではなく、日本の文化をも背負って世界と戦うことが「真の日本代表になる」ということなのではないかと気がつき、茶道がスポーツに 大切で、スポーツが茶道にも大切なんだなと。茶道とラクロスは切り離されたものではなく、実は一緒だったんだと気づくきっかけになりました。
単純に想像すると茶道が「静」でラクロスが「動」というイメージ持たれるかと思うのですが、実はこれって真逆だなと思うことが多くあるんです。茶道の動きは静かで緩やかなのですけれども、実は止まることがないんですね。円を描くように切れないようにお点前をするというのがすごくポイントで、逆にラクロスというスポーツはずっと動いているわけではなくて、止まることを意識している瞬間が多いんです。例えばシュートを打つときのゴールキーパーとの駆け引きも、そのまま打つとセーブされてしまうので、時を一瞬止めるような間をうまく使うことで、相手との駆け引きに勝ってシュートが入るということもあるんです。「静」と「動」というところにフォーカスした結果、ラクロスが「静」で茶道が「動」だったんじゃないかということに気づきまして、単純に静か動かで括るのでなく、「動の中の静」と「静の中の動」というものをより繊細に感じられるようになりました。
小堀さんの無二性を活かした「アスリート茶会」というものも開かれていますね
先ほどお話しした自身の経験があったので、「世界と戦うには世界のことを知らなくてはいけない。そして日本のことを知らなくてはいけない」と気がつき、競技だけでなく日本の文化を背負って戦いに行くということが競技の勝敗に直接関わらずともどこかで心の支えになるのではと思いアスリート茶会を始めました。
アスリート茶会にはこれまでどのような競技の方がいらっしゃいましたか
競泳、ボクシング、柔道、アメフト、ラグビー、ソフトボール、フットサル、パルクール、フェンシング、空手、柔道、プロレス、フィギュアスケート、バスケ、ラクロス、サッカー、テニス、あらゆる競技の方がいらしてますね。
日本代表の選手だったり、引退された元日本代表の選手だったり、幅広くいらしていただいてますね。
2013年から少しずつ始めて、今では数え切れないくらいの回数になりました。私がW杯に出て「日本代表で戦う選手にとって足りないものは日本の文化だな」と感じてから、アスリートの方に直接お声がけして日本文化として茶道を体験していただいてたのですが、それが徐々に「アスリート茶会」と呼ばれるようになり今のように確立していきました。これからも続けていきながら、たくさんの方に日本文化としてのお茶を知っていただければと思っています。
茶道とラクロス、どちらでもTHULEのバッグをお使いいただいてますね
-バックパックを茶道で、キャリーケースをラクロスで使っています。これまで野点をしに行く際は道具を紙袋や他のバッグに入れることもありましたが、不安定だなと感じていたんです。お茶の道具は壊れたり割れたりしやすい繊細なものが多いので、このThule Chasm Backpack 26Lはクッション性があるおかげで茶道具を入れたときに保護してくれるのでとても安心なんです。あとはお茶の道具は小物がすごく多いんですね。ちょっとした布巾や香袋みたいな細々したものが多いので、ポケットがいっぱいあるのがすごく嬉しいです。茶道は最も効率よく美しく見えるように1から10までお点前が決められていて、1つずらしてしまうと一気にあべこべになってしまうんです。実はすごく合理的にお点前ができてるんですね。リュックも何をどこに入れるかを決めて1つのものを持ち歩けば、目的地に着いた時に合理的にものが展開できますし、終わった後も合理的に収納できるので、効率よくテンポよく、綺麗に展開してきれいに収納できると感じています。
このバックパックでお茶をしに行くときは外や友人のご自宅のテーブルなどカジュアルなスタイルでやるだろうなと思ったので、洋室でお茶碗などを出す際に畳の上に座っているような感じにできたらいいなと、背中のポケットに入るサイズの畳を3枚特注で作っていただきました。
キャリーケースは遠征や試合の時に使ってます。寒がりなので特に冬になると荷物が多くてキャリーじゃないと荷物が入りきらないんです。このキャリーケースは外側のサイドにチャックがついていて、ごそっと荷物を取り出せるのが嬉しくて。キャリーケースは荷物が入っている場所がわかっているのに一周ぐるっと開けなきゃいけない点が少し面倒だなと感じていたのですが、これはサイドのところにポケットがついているので便利だなと思います。
大きくてものがいいっぱい入るんですが、膨らんで見えないシルエットも嬉しいですね。取り出しやすい上にキャリーそのものが軽いというのも嬉しいポイントです。
今日掛け軸は「千里同風」。千の里、同じ風と書いてあるのですが、千里はとても遠い距離のことを指します。同風は字のまま同じ風ということで、元々は「千里先の遠い国にもここと同じ平和な空気が流れて欲しい」という天下泰平の意味の言葉なんですけれども、茶道とTHULEという千里離れた全く違うもの同士が今日の取材を通してこの茶室で出会い、茶道とTHULEのファンの方々にもそれぞれが届いていただきたいなということ。そして今まで茶道をやっていてもこういうバッグに関わりのなかった方々に、私を通して新しい使い方などを知っていただいて、千里先の茶道というところにバッグの風を吹かせてもらえたらいいなという思いでかけました。
今後の展望ややってみたい事はありますか
-アートとして茶道を表現したいと感じています。1番の目的は文化として茶道を多くの人に知ってもらうことです。
そのためにまず茶道に触れて楽しんでいただきたい。ですので、「見る/魅せる」茶道として音楽や書、ダンス等のアートの中で茶道を表現し多くの人に見てもらいたいと思っています。茶室の中で作法はとても大切なことですから、まずは茶室から飛び出して舞台芸術として皆さんに楽しんでいただけるイベントをしたいと考えています。